看護部長インタビュー|患者さんに一番近い場所で、凜として輝く看護師。宇治病院が大切にする「看護の原点」

看護部長 樋口 久子
国立病院機構の病院で35年間勤務し、救命救急や手術室、がん看護などを経験。京都・大阪の4施設で看護師長、副看護部長を歴任したのち、2020年に社会福祉法人あじろぎ会・宇治病院へ入職。副看護部長を経て、2025年より看護部長を務める。日本看護協会認定看護管理者。
▼目次
1.私の看護観、宇治病院の役割
2.その人らしさを取り戻す看護
3.一人ひとりの成長を支える教育体制
4.仕事もプライベートも充実させる職場
5.凛とした職業人を共に目指す仲間へ
わずかな変化も見逃さない。救命救急から看護管理まで貫いてきた看護観
救命救急から看護管理まで、長いキャリアの中で最も大切にしてきたのは、患者さんの身体の中でいま何が起きているのかを、主観的・客観的な情報から正しくアセスメントすることです。そのうえで、医師と協働しながら治療やケアにあたってきました。
看護師には、わずかな変化も見逃さない観察力と、それを読み解くアセスメント力が欠かせません。チームで対応する力や、ときには医師と話し合い、交渉する力も求められます。
治療の先にある「どう生きるか」を支える。地域包括ケア時代の宇治病院の役割
急性期の現場に長く身を置く中で、医療を取り巻く考え方は大きく変わってきたと感じます。治療を最優先にするだけでなく、その人がどう生き、どのような最期を迎えたいのかを大切にする時代になりました。
高齢化が進み、多死社会といわれる中で、地域包括ケアシステムは第2ステージに入っています。2040年を見据えた新たな地域医療構想も議論されており、地域の中小病院の役割はこれからも変わっていくでしょう。
いまは、かつてのように治療が終わればすぐにご自宅へ帰っていただける状況ではありません。宇治病院は、急性期の治療を終えた高齢の患者さんを多く受け入れる病院です。当院を経由することで、ようやく住み慣れた地域へ戻れる患者さんがたくさんいらっしゃいます。
看護師の役割も、施設の中で患者さんの生命を最大限に延ばすことだけではなくなりました。地域の中でその方がどのように生きていくのかを支えることが、これからの大きな役割です。当院は地域の病院や施設、訪問看護、ケアプランセンターなどと連携しており、看護師は意思決定支援や退院支援に深く関わることができます。

身体拘束を外し、その人らしさを取り戻す。認知症ケアと摂食嚥下・口腔ケアの強み
急性期では救命や治療が最優先となるため、やむを得ず身体拘束が必要になったり、認知症へのケアが後回しになったりする場面も少なくありません。けれど当院に移ってこられると、症状が落ち着き、倫理的な観点から身体拘束を少しずつ外していけることが多いのです。
看護師も落ち着いて患者さんと向き合えるので、自然と優しい関わりができます。看護学校では誰もがナイチンゲールを学びますが、急性期の現場ではその教えを思い返す余裕さえない日々もあります。当院では、『看護の原点』に立ち返ったケアを実践できると感じています。
当院には、認知症看護認定看護師と摂食嚥下障害看護認定看護師が在籍しています。医師も認定看護師の意見を尊重し、チームで薬の調整を検討するなど、専門的な視点を生かしたケアを行っています。黒岩メソッドを取り入れた口腔ケアも、看護師の間にしっかりと根付いています。
摂食嚥下や口腔ケア、認知症ケアは、「生きること」につながる基本的な看護技術です。これらを高い質で実践することで、高齢の患者さんが穏やかに、その人らしく過ごせるようになる。それが当院の看護の強みです。
違和感を言葉にする力を「武器」に。ACPと多職種連携を牽引する看護チーム
人生の最終段階をどのように迎えるか。アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の中で、患者さん一人ひとりの最期までを考えていくことは、看護師にとってもまだまだ課題です。
それでも、患者さんやご家族と日々向き合い、ACPを軸に多職種をまとめていけるのは、患者さんに一番近い場所にいる看護師だと考えています。だからこそスタッフには、「何か違うのでは?」と感じるジレンマがあるなら、それを医師や多職種と共有し、話し合えるだけの知識と技術を身につけてほしいと伝えています。その違和感を、根拠をもって言葉にできる力こそが、看護師の「武器」になるはずです。
日々の業務の中にも、連携しやすい環境が整っています。リハビリスタッフとの転倒カンファレンスや多職種による退院支援カンファレンスなど、職種の垣根を越えて顔の見える関係を築きやすいのも、当院の特長です。
他部署に協力を求める際には、相手の部署にとっても利益があること、あるいは「当然」と納得できる内容であることを大切にしています。看護部だけでなく他部署の状況も理解しながら、病院のために互いが協力し合えるよう調整しています。

学びは毎日の仕事の中に。一人ひとりの成長を支える教育体制
入職した職員には、それぞれに応じてプリセプターがつきます。副看護師長やリーダー看護師も、職場全体で教育に関わっています。基本的な看護技術は、一人ひとりが身につくペースに合わせて先輩看護師が繰り返し指導します。座学には学研のeラーニングを導入しており、いつでも視聴できる環境です。
教育計画は、クリニカルラダーをもとに年間計画を立て、OJTとOff-JTを組み合わせて行っています。2025年には日本看護協会のラダーの改訂に合わせて、当院のクリニカルラダーを全面的に見直しました。看護補助者(ケアワーカー)についても、系統的に評価できる仕組みづくりを進めています。
キャリア支援にも力を入れています。個人が希望する研修には、法人から研修費の支援があります。看護部としても、短期の外部研修に加えて、実習指導者講習会や医療安全管理者研修、認定看護師教育課程、特定行為研修といった長期研修への推薦を行っています。
実際に、当院から研修に参加して摂食嚥下障害看護認定看護師や皮膚排泄ケア認定看護師(WOC)の資格を取得した看護師や、特定行為研修を修了した看護師が在籍しています。そのあとに続いて、認定看護師の試験に挑戦する職員もいます。認知症ケアの分野にも、興味を持ってくれる人が増えることを期待しています。

自己犠牲ではなく「ありがとう」でつながる、仕事もプライベートも充実させる職場
看護部として大切にしている方針は、「仕事もプライベートも充実させる」ことです。看護の質を高めていくのは当然のこととして、そのための研修もできる範囲で充実させています。
一方で、看護は自己犠牲の上に成り立つものであってはなりません。管理職であってもプライベートとの両立は大切にしてほしいですし、一人ひとりのキャリアデザインも尊重しています。
法人の福利厚生はある程度整っていますが、それ以上に大切なのは現場の雰囲気です。子育てや介護が必要な職員に対して、圧力を感じさせることなく協力し合えること。個人の特徴を大切にして受け入れる、ダイバーシティの考え方を持つこと。課題にみんなで協力して向き合い、「ありがとう」とお互いに言い合えること。そうした積み重ねが、職員が機嫌よく働ける場をつくると考えています。
看護部の組織は、看護部長、看護師長、副看護師長、看護師、ケアワーカーで構成しています。看護師長が全体を見据え、自部署だけでなく部署同士が協力し合って行動できるチームを育ててきました。いまでは横の連携がしっかり取れる組織になっていると自負しています。

キャリアの転機にも。「誰かの役に立ちたい」という原点に立ち返れる職場
当院は、救命救急センターのような高度急性期医療を担う病院ではありません。その一方で、看護ケアはどこまでも深めていくことができます。特にこれから増えていく認知症の看護は、患者さんとじっくり向き合える当院だからこそ、しっかりと実践できる分野です。
看護師を志したきっかけが、「自分や家族が入院したときに、看護師さんに助けてもらった」という方も多いのではないでしょうか。そのとき目にしていたのは、患者さんの状態が落ち着いた場面での温かな看護だったはずです。その原点を大切にしたい方にとって、当院はやりがいを実感できる場所だと思います。
急性期での経験を経て、自分に合った看護を見つめ直したい方。結婚や出産など、ライフステージの変化をきっかけに働き方を変えたい方。キャリアのターニングポイントに立つ方も歓迎します。当院には、自ら慢性期の看護を選び、「こういう看護が好きだから」と入職してきた先輩たちもいます。

強く、たくましく、柔軟に。凜とした職業人を共に目指す仲間へのメッセージ
私たちは、あじろぎ会の「利他の心をもって地域の医療と福祉に貢献する」という理念のもと、看護・介護の専門知識と技術をもって、健康問題を抱える患者さんを最も近いところで支えています。そのためには知識と技能だけでなく、忍耐力、寛容さ、感受性、努力し続ける力も求められるでしょう。ヴァージニア・ヘンダーソンは、それを「優れた看護師は患者の皮膚の内側に入っていく」と表現しました。
私が看護部長として職員に望むことは2つです。看護や介護の専門職としてプライドをもって仕事をすること。そして、自分を大切にし、他者を大切にすることです。
学びは毎日の仕事の中にたくさんあります。一人ひとりが職業人として自律して考え、日々の実践から主体的に学びながら、チームの一員として周囲と協働してほしいと思っています。看護部は、地域や病院を取り巻く状況を見据え、法人内の関係部署とも調整しながら方針を決めています。その方針を理解し、組織の中で力を発揮してくれる方と一緒に働きたいと考えています。
地域医療のかたちがどれほど変わっても、患者さんにとって一番近いところにいるという私たちの立ち位置は変わりません。強く、たくましく、それでいて柔軟に、ぶれることなく看護・介護をする。そんな凜とした職業人を、共に目指しましょう。宇治病院で看護師として働き、成長することを望むのであれば、看護部として全力で支援します。
(写真・インタビュー・文:MottoBrand 福井勝雄)
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社会福祉法人あじろぎ会・宇治病院は、急性期の治療を終えた高齢の患者さんを多く受け入れ、住み慣れた地域へつなぐ看護を実践しています。認知症看護認定看護師や摂食嚥下障害看護認定看護師が在籍し、認知症ケアや口腔ケアをチームで深められる環境です。プリセプター制度やクリニカルラダーにもとづく教育に加え、認定看護師教育課程・特定行為研修への推薦や研修費の支援など、キャリアアップも応援しています。子育て中や家庭と両立しながら働くスタッフも多く、仕事もプライベートも大切にできる職場です。JR・京阪「黄檗」駅から徒歩5分、253床の地域密着型病院で、看護の原点に立ち返った看護を一緒に実践しませんか。まずは病院見学からでも大歓迎です。採用情報・エントリーは下記よりお気軽にお問い合わせください!
【先輩インタビュー】
・急性期か慢性期か迷う看護学生へ。新卒で慢性期を選んだ看護師が宇治病院で見つけた「その人らしさに気づく看護」
・一度つまずいても看護師はやり直せる。第二新卒で宇治病院へ、家族も仕事も大切にする男性看護師の働き方
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